書き下ろしSS

能「村づくり」チートでお手軽スローライフ ~村ですが何か?~ 3

水着

夏にプールを作ると、それが村の一大ブームとなった。
ただ、村人たちが大いにプールを楽しんでくれたのはよかったのだけれど、一つだけ大きな問題が発生した。
それは水着というものが定着した結果、普段からそれを着て村の中を歩き回る人が増えてしまったことだった。
まぁでも暑い夏だし、ある程度は仕方がない部分もあるだろう。
「……あるだろうけど」
「ルーク殿、この水着というものだが、普段着としてもなかなか快適だな」
機嫌良さそうに言ってくるのは、ハイレグ気味の際どい水着を身に着けたフィリアさんだ。
ちなみにここはプールではなく、僕の屋敷である。
ブシュウウウウウウウウウウウウッ!!
ああっ、またセリウスくんが鼻血を噴き出しちゃった!
「セリウスくん、大丈夫!?」
「し、心配しないでくれ……ちょっと、血が出ただけだから……」
「全然ちょっとじゃないし、顔真っ青だって! ほら、ポーション飲んで!」
しかもここ最近、フィリアさんを見るたびにこうなっているのだ。
一体どれだけポーションを飲ませたことか。
エルフたちが作るこの村のポーションの性能のお陰か、飲めばすぐに顔色はよくなるけど、それでも色々と不安になってしまう。
「ふむ、最近よく鼻血を流しているのを見るが……何かの病気ではないだろうか?」
怪訝そうに言うフィリアさんだけれど、原因はあなたです。
「うっ……」
ほら、フィリアさんが近づいたから、また鼻血が出そうになってる。
さすがに心配なので、僕はフィリアさんに水着をやめるよう説得しようとした。
だけどそれをセリウスくんが制して、
「だ、大丈夫……これくらい、慣れなければ……ダメなんだ……」
「セリウスくん……」
「男として……この程度で、気を失いかけていては……情けないにも程がある……」
うーん、彼の言い分も一理あるかもしれない。
そう思って、僕は頷く。
「確かに、いずれお嫁さんにしたとき、これじゃ夜の営みだってできやしないよね」
「およめっ……よるっ……いとなみ……っ!?」
セリウスくんが調子はずれの声を出した。
「そそそ、そんなっ……よよよ、よるのいとなみだなんて……っ!」
頭の中で妄想してしまったのか、セリウスくんの顔が見る見るうちに真っ赤になっていく。
ブシュウウウウウウウウウウウウッ!!
「うわあああっ、ごめん! 想像させちゃったみたい!」
僕は慌ててセリウスくんにポーションを飲ませた。
こんな感じでは、慣れるよりも先にセリウスくんが死んでしまいかねない。
「……やはり一度、しっかり休養した方がいいのではないか?」
「そんなことより、やっぱりプール以外でその姿は禁止っ! ちゃんと普通の服を着るようにして!」
「そ、そんな殺生な……私が何か悪いことをしただろうか……?」
絶句するフィリアさんだけれど、さすがにこの露出度は、セリウスくんのことを抜きにしても、村の風紀に関わるだろう。
というわけで、僕は急遽、プールや自宅以外での煽情的な水着の着用は禁止、というルールを作ったのだった。

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