書き下ろしSS

界最強の魔女、始めました ~私だけ『攻略サイト』を見れる世界で自由に生きます~

エゴサ

 「……よ……よぉし、やるぞぉ」

 イフォネの町の宿にて。
 ローナは決意を固めて、空中に浮かんでいる光の板――インターネットと向かい合っていた。

 インターネットとは、神々の知識が得られるSSSランクスキルだ。
 四角い『検索ボックス』なる枠の中にただ文字を打ちこむだけで、この世界の真理も、異世界の知識も手に入れることができる。
 このスキルのおかげで、ローナは強い装備を手に入れたりダンジョンを攻略したりと、さまざまな恩恵を得ていたが……。
 しかし、ローナにはまだ調べていないことがあった。
 そう、それは――。

「……“ローナ・ハーミット”、と」

 ローナはごくりと唾を飲みながら、検索ボックスに文字を打ちこむ。
 そう、今からローナがしようとしていることは、神の言葉で――『エゴサ』と呼ばれていることだ。

(……これまでは、なんとなく怖くて『エゴサ』できなかったけど)

 インターネットにはもちろん、自分のことも書いてあるだろう。
 なにせ、インターネットとは神々の書架なのだ。これまでインターネットで調べられなかったことはなかった。
 だから、ローナは意を決して『検索』ボタンをタッチし――。
 そして、検索結果が表示された。


――――――――――――――――――――
■Googre [ローナ・ハーミット    ×]
すべて 画像 動画 地図 ショッピング :もっと見る
約546,000件 (0.32 秒)
――――――――――――――――――――


(ご、54万件!? これ全部、私の情報……ってわけないよね?)

 なにはともあれ、この情報量はさすがインターネット先生といったところか。
 それから、画面を眺めていたローナは、ひとつのページタイトルに目をとめた。


『世界最強の魔女、始めました 〜私だけ『攻略サイト』を見れる世界で自由に生きます〜|小説 SQEXノベル』


「……世界最強の魔女、始めました? SQEXノベル?」

 気になったのでタッチしてみると、新しいページが現れた。
 そこに書かれていたものは――。


――――――――――――――――――――
■SQEXノベル 毎月7日発売!
新刊情報 フェア シリーズ一覧 書き下ろしSS 持ち込み 公式Twitter

世界最強の魔女、始めました 〜私だけ『攻略サイト』を見れる世界で自由に生きます〜
著者:坂木持丸
イラスト:riritto

Story
「SSSランクなんて最弱スキルを発現させるとは恥さらしめ!」
と実家から追い出された少女ローナ。
お金も食べ物も力もなく途方に暮れていたその時、
「……攻略うぃき?」
彼女だけが持つSSSランクの固有スキル
【インターネット】の使い方に気づく。
そのスキルの正体はこの世界の『攻略サイト』を
見ることができる、とんでもチートスキルだった!!
貴重なアイテムを無限に量産!
超レア装備もイベントスルーですぐゲット!?
スキルのおかげでやりたい放題…!
愉快痛快な異世界ファンタジー、はじまります!


          [  試し読みをする > ]
――――――――――――――――――――


「……………………」

 ローナはぽかんと固まる。
 ここに書かれていたのは、あきらかに――自分のことだった。

(え、小説……? 私が小説になってる……?)

 さすがのインターネットでも、自分が小説になっているとか意味がわからない。
 こんな一般人を観察して小説にしようだなんて、そんな物好きはいないだろうし。
 とはいえ、一緒に載せられている絵画(すごい)に描かれているのも、ローナにしか見えない。
 わけがわからなくて混乱すること、しばし。

(……試し読み? 書き下ろしSS? よくわからないけど……中身を確認してみよう)

 そう思って、ローナは『書き下ろしSS』と書かれたボタンを押してみた。


――――――――――――――――――――
■書き下ろしSS
SQEXノベル > 書き下ろしSS > 世界最強の魔女、始めました ~私だけ『攻略サイト』を見れる世界で自由に生きます~ 1

|エゴサ

「……よ……よぉし、やるぞぉ」

 イフォネの町の宿にて。
 ローナは決意を固めて、空中に浮かんでいる光の板――インターネットと向かい合っていた。

 インターネットとは、神々の知識が得られるSSSランクスキルだ。
 四角い『検索ボックス』なる枠の中にただ文字を打ちこむだけで、この世界の真理も、異世界の知識も手に入れることができる。
 このスキルのおかげで、ローナは強い装備を手に入れたりダンジョンを攻略したりと、さまざまな恩恵を得ていたが……。
 しかし、ローナにはまだ調べていないことがあった。
 そう、それは――。

「……“ローナ・ハーミット”、と」

 ローナはごくりと唾を飲みながら、検索ボックスに文字を打ちこむ。
 そう、今からローナがしようとしていることは、神の言葉で――『エゴサ』と呼ばれていることだ。
――――――――――――――――――――


(……!?!?!?)

 あきらかに、ここには自分の行動が書かれている。
 それも、ついさっき心の中で考えていたことも含めて、だ。

(……な、なにこれ、怖い)

 いやでも、偶然の一致ということも考えられる。
 さすがのインターネットでも、他人の心の中まではわからないだろうし。
 そう思いながら、おそるおそる続きを読んでみると――。


――――――――――――――――――――
(……!?!?!?)

 あきらかに、ここには自分の行動が書かれている。
 それも、ついさっき心の中で考えていたことも含めて、だ。

(……な、なにこれ、怖い)

 いやでも、偶然の一致ということも考えられる。
 さすがのインターネットでも、他人の心の中まではわからないだろうし。
 そう思いながら、おそるおそる続きを読んでみると――。
――――――――――――――――――――


「ひぃぃっ!?」


――――――――――――――――――――
「ひぃぃっ!?」
――――――――――――――――――――


 ローナは慌ててインターネット画面を消した。
 画面が消える直前、小説の中のローナも一緒に悲鳴を上げていたが……見なかったことにする。

「………………」

 ローナはしばらくして落ち着いてから。

「……うん。エゴサはもうしないようにしよう」

 エゴサって、怖い。
 ローナはまたひとつ、インターネットで教訓を学んだのだった――。

TOPへ