書き下ろしSS
田んぼでエルフ拾った。道にスライム現れた Ⅱ
ミーチューバーになりたい!
「私、これからはミーチューバーとして食べていくよ!」
「おおそうか」
ある日の昼下がり。
食卓を挟んだ向こう側で、スティルシアが急にそう叫んだ。
いつもの発作だろう。日に一度は突飛な発言をしないと死んじゃう病気にでもかかっているのだろうかこいつは。
適当に受け流しながら、俺は味噌汁をすする、
「いけると思うんだよね……! 超絶美少女エルフの人生楽勝ちゃんねる!」
「どんな動画撮るんだよ」
「私が四六時中だらだらしてる光景を無編集で垂れ流すの。ペットチャンネルとかと同じ路線だね。畜生どもなんかより私の方が可愛いからこれは流行るよ!」
「なんでそんなにナルシストなのお前……」
「私が他人に自慢できる物なんて顔ぐらいしか無いからね」
「見た目だけは良いもんな」
「なんでそんなこと言うの! キレるよ!」
「情緒不安定過ぎない?」
怒りを
動画投稿なんてしたら目立ち過ぎる。これ以上面倒事を増やさないでほしい。
「はぁ……言っとくけど、動画なんて駄目だからな!」
「もう始めてるよ?」
「は?」
何となしに放たれたスティルシアの言葉。俺はそれに呆けた声を漏らす。
スマホを取り出し、試しに検索してみる。
『超絶美少女エルフの人生楽勝ちゃんねる』登録者363人
「あるし……」
「今朝に始めてもう三桁も登録者が居るんだよ、凄いでしょ!」
投稿された動画は全部で二本。【お菓子食べてみた】【お昼寝してみた】見事にクソみたいな動画しか無い。
しかし、再生数に対してコメントは異様な程多かった。
1023再生
2956件のコメント
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『コスプレだよね? どうやって耳ピコピコさせてるんだよw』
『嫌な顔をしながら
『滅茶苦茶かわいい。飼いたい』
『睫毛なっが』
『お菓子買ってあげるからお姉さんと遊ばないか』
『嫌な顔しながら腋見せてくれ』
『なんか知らんけど性格悪そう』
『頬っぺたふにふにしたい』
『腋見せろ』
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「見てよこの人気! これなら登録者百万人越えもそう遠くないよ!?」
「性格悪いってバレてるぞ。あとなんか一人で五十件ぐらい『腋見せろ』ってコメント打ってるやべぇのがいるんだけど」
「あぁ……私の魅力はいとも簡単に人を惑わせてしまうんだね……」
よよよ、と下手な泣き真似をしながらスティルシアは崩れ落ちた。
俺はそれを他所目に、スティルシアに貸しているパソコンの方へと歩いていって電源を点ける。
「えっと、ミーチューブのマイページはっと……あった」
迷わず『チャンネル削除』をクリックした。
こいつの事だから、どこぞの大物配信者みたくうっかり外の風景でも映して住所特定されたら最悪だ。
「なーにしてるの? 君もコメント欄で私の可愛さを讃えたいの?」
「お前のチャンネル消したわ」
「えっ」
スティルシアは一瞬唖然とした後、わなわなと震え始めた。
「わ、私の金づ……視聴者がっ!」
「今金づるって言いかけたよな?」
「う、うぅぅぅ……青山に土地買って高級車乗り回す私の夢がぁぁぁ……!」
「若手の野球選手みたいな夢抱いてんなお前」