書き下ろしSS

生したら最強種たちが住まう島でした。この島でスローライフを楽しみます 2

レイナの収納魔法にはなにがある? ②

 以前、レイナの収納魔法には色々なものが入ってるなと思ったことがある。
 彼女が持ってきた道具のおかげで快適に過ごせるのだから文句などあるはずないのだが、それでもたまになんで持ってきたのだろう? と思う物もたくさんあった。
「気になる……」
 レイナは今、家の中で本を読んでいる。
 家のソファも、テーブルも、本棚や外にあるハンモックもすべてレイナの持ち物だ。
 元々『最果ての孤島』と呼ばれるこの島へは探索に来たはずなのだが、いったい彼女はなにを思ってこんなものを持ってきていたのだろうか?
「我も気になる……」
「ルナも……」
 遊びに来ていたティルテュとルナが、俺の横に来て一緒にレイナを見る。
 レイナも家の中だからか寛いでいるのだが、たまに腕を軽く振るって収納魔法を生み出すとそこに手を入れてなにかを取り出した。
「な、なんだあれは……?」
「扇風機、かな?」
「お兄ちゃん、扇風機ってなに?」
「えーと……涼しくしてくれるやつ」
 今日はちょっと蒸し暑いからか、うっすらミストを生み出しながら風を発生させる道具を顔に当てていた。
 綺麗な紅い髪を揺らしながら、ダラーとしている顔をしているのはよほど気持ちがいいのだろう。
 ――というか、あんなものあったんだ。
 魔導具、というものが大陸にあるというのは聞いたことがあったが、あんな道具まであるとは驚きだ。
「なんかあのレイナ、ちょっと面白いな」
「ねー。お姉ちゃん、だらけきってるー」
「……まあ、あれはああなるよね」
 俺たちが見てることに気付いていないのだろう。
 一人で「あー」と声を上げて、油断しきっていた。
 あれ、俺も子どもの頃よくやったなぁ……。
 夏にあれしながら食べるアイスも極上で――。
「「あっ!」」
 なんて物思いに耽っていると、ティルテュとルナが同時に声を上げる。
 いったい何事かと思ってレイナを見ると、彼女は収納魔法から先日作ったアイスを取り出していた。
 読んでいた本はいつの間にか横に置かれている。
 そして扇風機らしき物の前でだらーと足を伸ばしてアイスを食べる仕草は、いつもの凛とした姿とはだいぶかけ離れていた。
「ず、ずるい! 我もアイス食べたい!」
「る、ルナも! あんな風にだらだらしたい!」
「あ。ちょっと二人とも――⁉」
 どうやら今のレイナの姿がよほど魅力的に見えたのだろう。
 二人揃って飛び出すと、そのままレイナの下へと駆け寄っていく。
「我にもアイスを!」
「ルナにもアイスを!」
「ふ、二人ともいつから見てたの⁉」 
 まさか見られていたとは思わなかったのか、レイナが焦った顔をする。
 その姿を見ながら、仕方ないと俺も近づいていく。
「ははは、ずいぶんと気が抜けてたね」
「え? あ、アラタ? う、うそ……もしかして、見てた?」
「まあ、うん」
 そう言った瞬間、彼女の顔が髪の毛のように真っ赤に染まる。
 あわあわと、動揺した姿を見せるのはちょっと可愛らしかった。
「ち、違うの! あれはその、とにかく違うの!」
「まあいいんじゃない? 家の中でくらい気楽にしたってさ」
 それだけ彼女も気を許してくれているということだと思うと、むしろ嬉しく思う。
「レイナ! 我もアイス!」
「ルナにも! あとそこ代わって欲しい!」
「あ、ずるいぞルナ! 我もそれで涼みたい!」
 俺たちの隣ではワイワイと騒がしい二人組。
 レイナが扇風機の前からどいた瞬間、同時にその位置につき満足そうな顔をしていた。
「……レイナ、俺もアイス食べていい?」
「はいはい……もう、三人とも仕方ないんだから」
 そう言いながら、彼女は収納魔法からアイスを取り出す。
 当たり前のように出てくるそれを見ながら、やっぱりレイナの収納魔法には他にいったいなにが入っているのか……気になって仕方がなかった。

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