書き下ろしSS

生したら最強種たちが住まう島でした。この島でスローライフを楽しみます 3

レイナの収納魔法にはなにがある? ③

 レイナの収納魔法には、色々な物が入っている。
 それはこの島に来てから何度も見てきたことだが、しかしなぜ彼女はこの孤島へ向かうというのに、あんなに余分な物を多く持ってきているのだろうか?
「いや、それが悪いわけじゃないんだけど……」
 レイナの持ち物のおかげで助かったことはたくさんあるし、なにより快適な生活が出来ている。
 だがしかし、未開の地を探索に来たにしては、不必要な物の方が多い気がするのだ。
 俺とティルテュは再び、レイナの死角からこっそり彼女を覗いていた。
「レイナのやつ、また扇風機出しているぞ」
「本当だね」
 だらーと彼女らしくない体勢で、アイスを食べながら扇風機の魔導具で涼んでいる。
 前回はあの光景を見られてすごく恥ずかしがっていたので、アイスを見て飛び出しそうになっているティルテュを抑えておく。
「むむむ、旦那様。我はもっとぎゅっとするのを所望する」
「はいはい」
 後ろから抱き締めると、ティルテュは満足した様子。
 しばらく観察をしていると、自分のお腹を軽く触り始めた。
「なにしてるんだろう?」
 顔を青くして、慌てて収納魔法からマットを取り出し、地面に敷く。
 そしてそのまま軽装になると、いきなり柔軟体操をし始めた。
「……」
 こ、これは……なんだかよくないような……。
 正直レイナの身体は、男なら誰もが生唾を飲み込むほど魅力的だ。
 そんな彼女が足を開脚させて身体を前に倒したり、横に倒したりするのは、なんというかあまりにもエロい。
 こうして隠れて覗いているのは、さすがに駄目だろう。
 俺が目を背けようとすると、レイナがまた道具を取り出した。
「むむ? あれはなんだ?」
「えーと、まさか、ダンベルと腹筋ローラー?」
 どう見ても魔導具とは違う、簡単な作りの道具。
 しかしまさか、異世界で、しかもこんな島の中であんな道具を見ることになるとは思わなかった。
「っ――!?」
 レイナがダンベルを持った腕を上下にし始めると、その呼吸に合わせて彼女の胸も上下する。
 ――だから、エロいって!?
 いや、わかっている。レイナは誰も見ていないと思っているから、ああして無防備に筋トレをしているのだ。
 そうじゃなければ、あんな風に……。
「旦那様……ちょっと目が怖いぞ?」
「え? あ、いや……」
 ティルテュからジトーと疑いの眼で見られてしまうが、許して欲しい。
 だって今もレイナ、ダンベルが終わったら腹筋ローラー使い始めてるし。
 彼女が前に出てくる度に、その大きな胸や健康的な太ももが前後し、男の俺には刺激的過ぎる光景が続いているのだ。
 あんなのずるい……
 正直、目が離せなくなっていた。
 罪悪感はあるがそれ以上に、この光景は男として目を逸らしたら駄目だと思ってしまったのだ。
「むむむ……レイナ! 旦那様が見ているぞ!」
「え、うそ!? アラタ!?」
「あ、ちょっとティルテュ!?」
「ふーんだ。そんなエッチな目をした旦那様なんか、知らないのだ!」
 ちょっと怒りながら、逃げ出す様にティルテュが去っていく。
 残された俺は、ただ固まっていた。
 そしてレイナもまた、固まっていた。
「な、なんでそんなところで……」
「あ、いや……その……」
「いつから、見てたの?」
 筋トレ、というよりダイエットを始める前からレイナのことをエロい目で見てました、というわけにはいかない。
 しかし、それじゃあなんで彼女の死角からずっと見ていたのか、理由が説明できない。
 あ、駄目だこれ。詰んだ……。
「アラタ……ちょっとお話聞かせてくれるかしら?」
 地面に置かれていたダンベルを拾ったレイナが、ゆっくりと近づいて来る。
 今回は完全に俺が悪い。
 そう思って、逃げずに罰を受けることにした。
 ただ一つ、最後にどうしても聞きたい事がある。
「ねえレイナ?」
「なにかしら?」
「その振り上げたダンベルと腹筋ローラー、なんで持って来たの?」
 質問の答えは返って来ず、代わりにだいぶ固いダンベルが降ってくるのであった。

TOPへ