書き下ろしSS

退退屈嫌いの封印術師 3 ~封印術師と受け継ぎし者~

封印されている時の感覚

「ねぇねぇ会長」
 草原を歩いている途中、ソナタが話しかけてきた。
「なんだよ」
「気になってたんだけどさ、封印されている時ってどういう感覚なんだい? 箱の中に押し込まれているような感じ? それとも意外に快適だったりするのかな?」
「どういう感覚……と言われてもな」
 俺は経験者である2人――シュラとレイラに視線を移す。
「基本、寝てるような感覚だよね」
「それでいてちゃんと時間が流れているような感覚はあるのよね……」
 この4人の中で封印術を受けていないのはソナタだけだ。
 シュラもレイラも俺も封印経験者である。
「あと、封印術を受けた瞬間は全身を鎖で縛られたような感覚があるよね」
「そうそう、鎖に縛られて湖に引きずり込まれるような感じ」
「一度封印術が発動すると抗いようがない……シール君の支配の魔力が全身を包んで、一切の自由が利かなくなる」
「いま思い出すとゾッとするわね……」
 レイラとシュラの話をソナタは悶々と聞いていた。
「いいな! いいな! 僕も封印術受けてみたいっ! ――会長、僕にも」
「断る!」
「え~! どうしてさ!」
「なんか気持ち悪い」
 封印術を好んで受けてみたいって奴は初めてだ。
 でも、なんつーか……好んで受けられるのはなんか、気色が悪い。
「別にいいじゃないか。ちょこっと封印して解封してくれればさ~」
「お前はなんでそんな封印術を受けてみたいんだ?」
「だって封印術って希少も希少だし、受ける機会なんてそうそうないよ。どんな感じなのか気になるのは当然じゃない?」
「……まぁ、この先旅を続けていけばお前が封印術を受ける機会もあるだろうよ」
「本当!?」
「連携で味方を封印することもある。その時が来るまで楽しみに待ってるんだな」
 ま、ソナタは1人でバケモン並みの力を持ってるから、俺と連携する機会なんてほとんど無いだろうがな。
「……いやでもアンタ、そんなことしたら……」
「……そうだよシール君、忘れたの?」
 レイラとシュラが顔を赤くして何かを訴えかけてきている。
「……なんだよ、なにか問題あるか?」
「……だーかーら! 封印術をあのアホに使ったら――」
「……裸に、なるんだよ?」
 あ。そうだった。
「……さっき自分で言ってたじゃない」
「……ド忘れしてた」
 俺はソナタの方を見る。
 ソナタはワクワクを隠せない様子だ。
「いやぁ、楽しみだなぁ。会長の封印術♪」
 封印術を人に使うと服が脱げてしまう。生身だけが封印される。
 つまり解封した時、ソナタは裸で出てくることになる。
「……」
――不快だな。
 なんか嫌な感じがしたのはこれか。
「ん? どうしたんだい会長」
「なるべく、お前には封印術を使わない方向でいく」
「え!? どうして!?」
「お前の魔力量は俺より上だ。お前を封印することはできない」
「そんなのいくらでも調整するって!」
「しつけぇな! どうしても使わざるを得ない状況になった使うよ。それまで待ってろ!」
 そんな状況にならないことを祈るがな……。

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