書き下ろしSS

生したら最強種たちが住まう島でした。この島でスローライフを楽しみます 5

レイナの収納魔法にはなにがある? ⑤

 レイナは王国貴族から逃げるように、最果ての孤島の調査を請け負った。
 もう戻らない決意をしていたからこそ、持ってこられるものは全部持ってきたらしい。
 あまり考えずに収納魔法に突っ込んだこともあり、内容をすべて覚え切れていないままだそうだ。
「収納魔法の中身、一回整理しないとねぇ……」
「「「っ――⁉」」」
 始まりはその一言だった。
 家で遊んでいた子どもたちが一斉に反応する。
「ルナ、スノウ、聞いたか?」
「うん、聞いたよー」
「きいたよー」
 三人はうなずき合い、そして立ち上がる。
 以前からレイナの収納魔法の中身に関して並々ならぬ関心を抱いていたからか、お子様たちによるお手伝い部隊が発足するのであった。

 家の外。
 レイナの収納魔法は一軒家分は入るということもあり、すべてを出すとかなりの量になる。
 室内で整理を行うと大変なことになるため、こうして外で整理を始めることになった。
「で、この状況か」
「あはははは……」
 俺の隣では昼ご飯を食べに来たエルガが、呆れた様子でその光景を見ている。
 レイナが収納魔法で取り出した物を子どもたちに手渡し、子どもたちがそれぞれ分類ごとに分けていく。
「ママー、これはー?」
「オルゴールは娯楽系だからそっちにお願いね」
「はーい!」
「見ろルナ! 新しい玩具だぞ!」
「どうやって使うんだろうねー?」
 ちなみに、食べ物類は先に俺の収納魔法に入れられている。
 なぜなら子どもたちがつまみ食いするから。
「なんつーか、なんでもあるな」
「今までも不思議に思ってたんだけど、本当に色々と持ってきてるね」
 扇風機、筋トレローラー、本、玩具、読書用の本が大量に。
 たしかにこれは、なにを持ってきたのかわからなくなるだろうなぁ。
「収納魔法って便利なんだけど、なにが入ってるか頭に残るわけじゃないからすぐ中身が雑になっちゃうのよねぇ」
 一通り出し終わったレイナが休憩するためにこちらにやってきた。
 子どもたちは働いているが、まあ楽しそうだからいいだろう。
「たしかに。俺も適当に突っ込んじゃってるから、中身ぐちゃぐちゃだ」
「なんかでっかい箱を何個か用意して、そこに種類を分けて入れりゃいいんじゃねえの?」
「いやぁ、それは面倒だからさ……」
「そうなのよ」
 もちろん頭では棚卸表でも作って、出し入れする度に控えておくのがベストだってわかってるんだ。
 だけど収納魔法はその場でぽいっと入れられる手軽さがいいんだよね。
「まあ、チビ共がああして楽しんでるなら別に良いけどな」
「なんでも遊びに変えるのは、子どもの得意技だね」
 そうしてしばらく見守っていると、スノウがなにかを持ってこちらにやってきた。
「小さいママがいる!」
「え? あ、これ……」
 手渡されたのは写真立てで、その中には小さな教会と子どもたちが写っていた。
 中心には見覚えのある紅い髪の女の子が、恥ずかしそうに立っている。
「孤児院の写真だわ。懐かしい……」
「へぇ……子どもの頃のレイナも可愛いね」
「っ――⁉」
 やっぱり美人は何歳でも美人だなぁ、なんて思っているとレイナが慌てて写真を隠してしまう。 
「こ、これは私が持つから! スノウ、他のがあったらアラタには見せないでこっちに持ってきてね」
「え、なんで? もっと見たいんだけど」
「なんでもよ!」
 レイナの言葉を聞いたスノウは元気に戻っていき、レイナも行ってしまった。
「くくく……お前はもう少し女心を理解した方がいいぜ」
「エルガはなんでレイナがあんなこと言ったかわかったの?」
「まあな」
 と言いながら、笑うだけで教えてくれるつもりはないらしい。
「今度、子どもの頃の話を聞きたい、とでも言ってみな。そしたら教えてくれるかもしれねぇぜ」
「……うん?」
 よくわからないが、エルガがそう言うならそうしてみようかな。
「子どもの頃のレイナか……」
 今走り回っている子どもたちを見守りながら、一緒に整理をしている彼女を見る。
 きっと昔からああやって、みんなの面倒を見る優しい子だったんだろうな。
 そんなことを思いながら、俺も手伝いに行くのであった。

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