書き下ろしSS

能「村づくり」チートでお手軽スローライフ ~村ですが何か?~ 7

戦闘民族の男探し

 武闘大会が終わった直後。
 とあるアマゾネスが、血走った眼をしながら叫んでいた。
「強い男はいねえええええええがああああああああああああっ!?」
 彼女の名はチョレギュ。
 仲間のアマゾネスたちがこの村で男を見つけ、次々と結婚していく中にあって、彼女だけがまだ婚活を継続していた。
 彼女が求めるのはもちろん、自分よりも強い男。
 しかし彼女の期待も虚しく、武闘大会で決勝トーナメントまで勝ち進んだにもかかわらず、最後は女性の出場者に敗れ去っていた。
「男……男……誰か早く、あたいを負かせてくれぇぇぇっ!」
 結局このイベントでも理想の相手を見つけることができず、絶望するチョレギュだったが、決勝戦が終わった直後には目を爛々と見開いていた。
「いたああああああああっ! あたいに相応しい男だあああああああっ!」
 その熱い視線の先にいたのは、とある一人の少年だ。
 それは決勝戦で惜しくも敗れたものの、優勝したゴリティアナと凄まじい戦いを繰り広げた、王国軍のラウルだった。
 若くして軍の要職に就く彼の強さは、明らかにチョレギュを上回っていた。
「あいつはあたいの男おおおおおおおおおおっ!」
 チョレギュは衝動に突き動かされるがまま、試合後のラウルのもとへと突っ込んでいく。
 だがそんな彼女の前に立ち塞がる人物がいた。
「残念ですが、ラウル様はあなたのご希望に添うことはできないかと」
 ラウルの副官を務める女性兵士、マリンだった。
「またてめぇが邪魔するかあああああああああっ!」
 チョレギュは絶叫する。実は決勝トーナメントで、彼女を破ったのもこの王国軍の女性兵士だったのだ。
「つーか、何でてめぇにそんなこと分かるんだよっ!?」
「分かります。いつもお傍に仕えておりますので」
 どこか勝ち誇ったように告げるマリン。
 その様子から、チョレギュはピンときた。
「てめぇまさかっ……あたいの男に惚れてやがんのかっ!?」
「ほ、惚れっ……ごほん! 何を言っているのですか? ラウル様と私は、将軍とその副官という関係。そのような感情、持つはずもありません」
「ああ? だったら何で邪魔しようとすんだよ? あたいがアプローチしようが、てめぇには関係ねぇだろうが!」
「過激なファンの接近からその身をお守りするのも副官の役目ですので」
「誰が過激なファンだ! だったら、てめぇをぶっ倒して近づいてやる!」
「ならば再び返り討ちにして差し上げましょう」
 こうして武闘大会とはまったく無関係に、二人は再び激突したのだった。
 だがやはりマリンの方が一枚上手だった。敗れるチョレギュ。
「くそがああああっ!」
「ラウル様はこれから王都に戻り、また将軍として忙しい日々を送ることになります。あなたの相手をしている時間など到底ありませんので、諦めることですね」
「うぅ、チクショウ……女に負かされても、意味ねぇんだよ……」
 悔しがり、嘆くチョレギュだったが、そこでふと何かを思いついたように、
「待てよ……? 強い男が無理なら、強い女でも……?」
 その視線が、自身を二度にわたって打ち負かした槍使いの方を向く。目つきが段々と乙女のそれになりつつあったところで、マリンが慌てて指摘した。
「いや、そもそもアマゾネスは、強い子供を産むために強い男を探しているのでは?」
「はっ、言われてみれば!? やっぱ男おおおおおおおおっ! 強い男はいねぇがああああああっ!?」

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