書き下ろしSS
転生したら最強種たちが住まう島でした。この島でスローライフを楽しみます 6
レイナの収納魔法にはなにがある? ⑥
前回レイナの収納魔法に入っているものはだいたい整理出来た。
彼女の魔力であれば一軒家分くらい入ると言うだけあって、色んな物が出てきて子どもたちも満足そうだ。
だが、俺は一つだけ納得出来なかったことがある。
「レイナの子ども時代の写真、もっと見たかったなぁ」
「え……」
そんなことをポツリと呟くと、ソファに座っていたレイナが反応する。
「前色々と整理したとき隠したけどさ、俺はもっとレイナのこと知りたいんだよ」
「そ、そんなこと言われたって……その、アラタに見られるの恥ずかしいし」
「スノウもママの子ども時代の写真見たいよね?」
「ままの、しゃしん?」
積み木で遊んでいたスノウは、最初なにを言われたのかわからない様子で振り向きながら首を傾げる。
「ママが、スノウくらいの姿をしてる絵だよ」
「っ――⁉ 見たい!」
「ちょっとアラタ、スノウに言わせるのはずるい……」
「「駄目?」」
「うぅぅ……」
俺とスノウ、二人で頼み込むとレイナは渋々という感じで頷いてくれた。
「わ、わかったわよ……」
「「やったー」」
スノウとハイタッチをして、喜びを共有しているとレイナは収納魔法からアルバムみたいに分厚い本を出してくれる。
「ちょっと先に確認するから待ちなさい」
そう言うとそのまま本をめくり、顔を渋くしていく。
これはいい、これは駄目……と呟きながら駄目と言われた写真を抜き取り、収納魔法に隠していく。
「全部見せてくれないの?」
「だって、裸の写真とかあるし……」
「ああ、子どもの写真だとあるあるだよね」
さすがにそれを見せてくれとは言えないのでしばらく待っていると、レイナはアルバムを手渡してくれる。
「ほら、これでいいでしょ」
「うん。一緒に見よっか」
「はーい!」
レイナの隣に座ると、スノウがその膝の上に乗ってきた。
そうして抱きかかえるようにしながら、アルバムを開いていく。
レイナがまだ教会の孤児院にいた頃で、画質は地球の物とは比べものにならないくらい悪い。
それでもはっきりとした顔立ちは、彼女がそうだ、とすぐにわかるものだった。
「わぁ! ままかわいい!」
「ね。色んなママがいるねぇ」
教会の子どもたちと一緒に雑魚寝をしている写真や料理を手伝っている写真。
頬にクリームを付けていて、シスターさんに拭かれているような写真もあった。
「この人が前に言ってた、レイナの育ての親のシスターさんなんだ」
「ええ。とても優しい人だったわ」
こんな人になりたいって思ってたんだもんな。
結局エディンバラさんに才能を見初められ、その道に進むことでシスターと孤児院の子どもたちが楽出来るからということで、魔法使いになったわけだけど……。
もしかしたら、こうしてシスター服を着たレイナの未来もあったのかもしれないな。
「うん。レイナならきっと、良いシスターさんになれたと思うよ」
「……どうしたの急に?」
「だってさ、今がまさにそういう状況だもん」
スノウがいて、ルナがいて、ティルテュがいて、仲の良い子どもたちの面倒を見るお姉さん。
これ以上ないくらい嵌まっていて、どこでも彼女なら夢だった優しいシスターさんになれると思った。
「そうね……そう考えたら、夢も叶っちゃった」
嬉しそうに微笑む姿につい見惚れていると――。
「あー、ままおねしょしてるー」
「「えっ?」」
スノウの言葉に反応して、ついアルバムを見てしまう。
そこには今のスノウよりも幼いレイナがおねしょをして、布団の前で泣いている姿。
シスターさんは微笑ましそうにしているだけで怒っている様子ではないが、本人としては泣くくらい恥ずかしいことだろう。
「ちょ、嘘⁉ こういうの全部隠したと思ったのに⁉」
慌てて写真を取り出し、収納魔法の中に放り込んだが……。
「み、見た?」
「ごめん……」
「っ――!」
ばっちり見てしまってさすがに誤魔化すことは出来そうになかったので謝ると、彼女は顔を真っ赤に染めて涙を浮かべた。
いやまあ、子どもの頃のことだし別に恥ずかしいと思わなくても良いと思うけど、本人はそういうわけにもいかないか。
「あははー! ままおねしょー!」
そしてツボに嵌まってしまったのか、スノウは爆笑を続ける。
「スーノーウー……そんな風に笑っちゃ駄目!」
「あははははー!」
ほっぺたを引っ張られながらも笑いを止められないスノウの笑い声は、ずっと止まることはない。
それを見て俺もつい微笑んでしまう。
「子供の頃のレイナを見れて俺は良かったよ」
「……今度、アラタの子どもの頃の話ももっと聞かせてよね」
「うん、いいよ。俺もおねしょしたことあるしね」
「そういうこと言わないの!」
今度は俺の頬を引っ張られ、それを見たスノウがまた笑い出し、家族仲良く楽しい一日を過ごす。
――あっ……。
もう一枚レイナが裸で水浴びをしている写真が残っていることに気付いてしまい、それはさすがに見なかったことにした。
言葉にするのは大切だけど、言わないことも大事だからね。