書き下ろしSS
私、能力は平均値でって言ったよね! 19
王女付きナノマシン
【ヒャッハー!】
《何たる僥倖……》
[まさか、こんな当たりくじを引くとは……]
【《[思ってもいなかったあァ〜〜!!]》】
大喜びの、ナノマシン達。
何がそんなに嬉しいかというと……。
【ただの平凡な王女なんかの、移動専用にと制限を掛けた特殊アイテムボックスのサポート要員など、滅多に出番のない、つまらない配置だと思っていたよなぁ……】
《ああ。せいぜいが、数カ月に一度くらい、『ワンダースリー』が大陸間の移動に使うだけ、と思うよなぁ……》
[それが、まさかの……]
【《[大当たりぃィ〜〜!!]》】
【大陸間でコソコソと個人貿易をやって小金を稼いでいると思ったら……】
《凶作と大豊作の大陸を結び、餓死するはずだった大勢の原住生物を救いやがった!》
[俺達は、魔法の行使という形でしか、世界に干渉することは許されていない。
だから、原住生物がいくら死のうが苦しもうが、何もできやしない。
いくら同情しようが、いくら助けたいと思おうが……。
それを、アイツらときたら……]
【《[複数の国家規模で、俺達を禁則事項に触れないような形で使って、多くの原住生物を救いやがった!!]》】
【攻撃魔法の行使という形で、死と破壊にばかり使われていた、俺達ナノマシンを……】
《救いの使者、女神の奇跡として使いやがった……》
[おおおおお……]
{特報! ナノネットの今週のトレンドランキング上位ワード、『第三王女コンビ』、『エスト&モレーナ』、『我ら、大量の原住生物を救う』が独占!
第三王女コンビのリアルタイム中継、『ワンダースリー』と『赤き誓い』を抜いて、週間ランキング1位に!}
【《[おおおおおおおおお!!]》】
もう、ナノネットの掲示板が大騒ぎである。
あの、旧大陸における、異次元世界からの侵略者に対する絶対防衛戦。
大盛り上がりだったあの時をピークに、それ以降はあまり大きな出来事や面白いイベントがなく、ナノネットの実況板も掲示板も視聴率が低迷していたのである。
そこに現れた、期待の超新星、第三王女コンビのエスト&モレーナ。
王族としての矜持を保ちつつ、セコく立ち回っての小遣い稼ぎ。
そうかと思えば、私財をはたいての慈善活動……の振りをした、金儲け……と見せかけての、大陸を跨いだ国家規模での人助け。
破壊と殺戮にばかり使われて、人を助けることなど、治癒魔法を使う時くらいしかない、ナノマシン達。
……それが。
それが……。
何千、何万の原住生物達を救うために使われた。
【笑いのマイル様。
けな健げ気さと努力の、『ワンダースリー』。
……そして、涙と感動の、第三王女コンビ。
長い長い長い長い活動期間において、ひ弱でいたい幼け気な原住生物を憐れみ、しかし手を差し伸べることができない、俺達ナノマシン。
自分の意思で行動することは許されない、ただの道具。
しかし今、俺達は、ふたりの王女と共に多くの原住生物を救った。
そうだ。たとえ原住生物には認識されていなくとも、俺達は、ヒーローになったのだ!】
《[{おおおおおおお〜〜!!}]》
……その日、ナノネットの同接数は、過去最高記録となった……。