書き下ろしSS

能「村づくり」チートでお手軽スローライフ ~村ですが何か?~ 9

ドラゴンのかき氷

「どう考えてもわらわの推しのレイジ・パンが一番なのじゃ!」
「あんな気の短いパンのどこがよいのだ! 吾輩が好きなプライド・パンが、すべてにおいて上回っているのだ!」
「そんなわけないのじゃ! プライド・パンなんて、レイジ・パンの足元にも及ばぬ! 安いジャムでも塗られて食われるのが関の山なのじゃ!」
「っ……プライド・パンの侮辱は許さないのだああああああっ!」
 赤と青の髪色の幼女たちが言い合っていた。
 それぞれドーラ、スーノと呼ばれている、どちらも人化した古竜である。
「また喧嘩してる……それもしょうもない理由で……」
 そんな二人の様子を見ながら、僕は溜息を吐く。
 レイジ・パンとプライド・パンは、いずれもこの村で人気の食パンのキャラクターだ。
 最近はそのヒーローショーが行われ、二人はそれにハマっているのである。
「まぁでも一緒にヒーローショーを観に行くってことは、意外と仲がいいのかも? 今も二人でキャラクターショップに来てるわけだし」
〝食パンメン〟たちはグッズ化されていて、村に専門ショップがあるほど需要があった。もちろん店内はいつも大勢のお客さんで賑わっている。
 そこで各々が好きなキャラのぬいぐるみを購入し、店を後にする二人。
「ああ、このふわふわの感触……癖になるのじゃ」
「なかなかの抱き心地なのだ……今夜は一緒に寝るのだ」
 お目当てのものを買えたお陰か、すっかり上機嫌で、喧嘩をしていたことも忘れた様子だ。
 と、そこでドーラがあるものを発見した。
「おっ、かき氷を売っておるのじゃ!」
「かき氷……?」
「氷を細かく砕いて、甘いシロップをかけた食べ物なのじゃ! 単純と侮ることなかれ、今日のような暑い日に食べるかき氷は最高じゃぞ!」
「そ、そう言われたらぜひ食べてみたいのだ!」
 夏の暑い日ということもあって、テイクアウト方式のお店の前にはちょっとした行列ができていたけれど、二人は最後列に並んだ。……古竜なのにお行儀がいい。
 かき氷の専門店のため回転率が早く、それほど待たずに順番が来た。
「わらわはいちごみるくじゃ!」
「吾輩は抹茶あずきにするのだ!」
 注文すると、すぐにお待ちかねのかき氷ができあがり、手渡される。
「早速いただくのだ! ぱくっ! ~~~~っ!? 確かに冷たくて美味しいのだ! それに甘いシロップがよくマッチしているのだ!」
 一口食べて目を輝かせるスーノ。
「……ただ、シロップはともかく、この氷は吾輩ならもっと良い物が作れそうなのだ」
「む? それはどういうことじゃ?」
「吾輩はアイスドラゴン。氷のブレスは得意なのだ。人間の身体のままでも――」
 そう言って、スーノはカラの容器に向かって口から息を吐き出した。
 すると見る見るうちに容器に氷が満ちていく。しかもまるで雪のようにふわふわできめの細かい氷だ。
「――この通りなのだ」
 その様子を見ていたかき氷のおじさん店主が叫ぶ。
「な、なんて見事な氷だ!? それこそまさに私が求めていたものかもしれない!」
「ほう、お主、吾輩の作り出した氷の素晴らしさが分かるのだ?」
 絶賛され、スーノは嬉しそうに応じる。
「ああ! 伊達にかき氷屋をやってはない! ちょっと食べてみてもいいか!?」
「別に構わないのだ」
「ありがとう! では早速!」
 幼女が口から吐き出して作った氷を、おじさん店主が嬉々として口にする。
 ……うん、文字にしちゃダメな情報だね。
「~~~~~~っ! や、やはりぜんぜん違う! 粒は驚くほど均一で、空気をたくさん含んで口当たりは軽く、何より氷自体そのものの純度が段違いだ!」
「ふふん、なんたって吾輩のブレスなのだ」
「お、お願いだ! うちのかき氷に、この最高の氷を使わせてくれないか!?」
「そこまで言うのなら、使わせてやってもいいのだ」
「やった!」
 こうしてスーノの氷のブレスによるかき氷が販売されると、それが大当たり。このかき氷屋は瞬く間に人気が沸騰し、連日大行列ができるようになったのだった。
「スーノたんのブレスによる氷……」
「それはつまり、幼女の唾(ry」
「ハァハァ……」
 ……一部の変態たちの間でも人気が沸騰したそうだけれど、その話は割愛したい。

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