書き下ろしSS

生したら最強種たちが住まう島でした。この島でスローライフを楽しみます 8

レイナの収納魔法にはなにがある? ⑧

 ――現像が出来たわよ。
 そう言ってマーリンさんが、以前預けたレイナの魔導カメラを持ってきた。
「おー! こんなに綺麗に写るんですね」
「さすがねマーリン。プロでもここまで綺麗に現像出来ないわ」
「レイナのカメラはかなり質が良かったからよ。これ、かなり高級品でしょ」
 そう言って手渡された写真は、俺がイメージしている異世界の光景が色々と広がっている。
 正直、自然に関してはこの島の方がいいなと思った。だけど人工的な建造物が比較的少ないこの島に比べて、街並はおしゃれだ。
 それに着ている服も現代ファッションとは異なり、一度は見てみたいなと思ってしまった。
「さて、それじゃあ私は帰るわ。理論から作り直してたら、徹夜になっちゃったし……」
「そんなに頑張ってくれたんですね……ありがとうございます」
「趣味みたいなものだから気にしないで」
 小さく欠伸をしたマーリンさんは、背を向けて家から出て行った。
「せっかくだし、今日は色んなところに行って写真を撮りましょうか」
「そうだね。スノウー」
「なーにー?」
 自分の遊び場でゴロゴロしているスノウに声をかけると、まったりした返事。
「お外遊びに行くから、準備してー」
「っ!」
 それまでのんびりしていたのが嘘のように機敏な動きで立ち上がり、いつも通りのお出かけ用の鞄に色々と詰め込んでいく。
「ちょうどティルテュが自分の巣の整理してるから、そっち行こっか」
「そうね。どうせなら家族みんなで写真を撮りましょうか」
 ――これ一つで、四十枚まで現像出来るから。
 マーリンさんがフィルムまで用意してくれたので、結構な枚数が撮れそうだ。
 そう思いながら出かけたのだが……。
「あっという間に撮り終えちゃったね……」
「ええ」
 ティルテュと合流して、古代龍族の住処で写真を撮り、そのまま移動してアールヴの村でみんなと写真を撮って、どこから聞きつけたのか大精霊様がスノウと撮りたいと言って。
 四十枚って結構な枚数だと思ったが、半日も経たずに終わってしまった。
「まあ原因の大半が、あの二人だけど……」
 ウッキウキな表情でスノウと遊ぼうとしているグエン様とジアース様。
 残念ながらスノウは微妙な顔をしているが、まあ本気で嫌がっていたら逃げるからまだ大丈夫だろう。
「マーリンに頼んで、次はフィルムの数を多めに持ってきましょうか」
「そうだね。ところで、さっきから凄い殺気がどこかから感じるんだけど……」
「え? 本当に?」
 どうやらレイナは感じていないらしい。
 だけどグエン様たちを見れば、怯えた様子でキョロキョロと見ているから、勘違いではないのだろう。
 ――これ……多分……。
 そう思った瞬間、大精霊の二人が影に沈みだした。
 グエン様たちは逃げだそうと必死だが、残念ながら彼女はかなり怒っているらしく、抵抗出来ないまま堕ちていく。
「あのー、シェリル様? 俺は別に悪いことしてないから許してくれません?」
 ――次は最初に来なさい。
「もちろんです」
 逆らうこともなく、それだけ言うと殺気は消えた。
 きっとシェリル様も、スノウと一緒に写真を撮れることを楽しみにしてたんだろうな。
「……本当に、あの人たちはスノウが好きすぎる」
「まあこれからたくさん撮る機会はあるし、いいじゃない。順番に回っていきましょう」
「そうだね」
 夕方、マーリンさんに頼んで現像して貰った写真を見ると、家族みんな楽しく笑っていた。
 こんな日々が、ずっと続きますように。

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