書き下ろしSS

生幼女は前世で助けた精霊たちに懐かれる 4(完)

叱られた日のダーウ

 ある日のお昼前。
「がうがうがうがうがうがう!」
 ダーウは立派な剣豪犬になるために特訓していた。
 大公家の屋敷にある中庭で木の棒を咥えて、力一杯全力でぶんぶん振り回す。
 ちなみにルリアとサラとスイは行儀作法の勉強中だ。
 そしてダーウは、礼儀作法練習中のルリアの顔をベロベロ舐めた罪で中庭に追い出されたのだ。
 追い出される際、ルリアに「ルリアもがんばってるからダーウも剣の修行をがんばるといい」といわれたので頑張っていた。

 だが、棒を振り始めると、どんどん楽しくなってくる。
 ダーウは楽しくて楽しくて怒られたことも忘れて棒を振り回す。
 それどころか本来の目的である剣の修行をしていたことすら忘れて棒を振り回しながら中庭を走り回った。

 そんなダーウを見た侍女たちは悲しみのあまり暴れているのだと考えた。
「……ダーウ、かわいそうに。叱られたのがそんなにショックだったのかしら……」
「ダーウ、こっちにいらっしゃい」
「がう? がうがうが~う」
 ダーウは遊んでいても呼ばれたら全力で駆けつける。
「ほら、おやつ食べなさい。内緒よ」
「わふ~」
 ダーウは人からおやつをもらうのが大好きなのだ。当然食べる。
 侍女たちに優しく撫でられて、ダーウは嬉しくて尻尾をぶんぶんと振りながらおやつを食べて水を飲む。
 それから侍女が通るたびダーウは「きゅーん」と哀れっぽい声をだしながら、棒を振りまくった。
 そのおかげで、ダーウは侍女たちからおやつをもらいまくって撫でられまくることに成功したのだ。
 実は侍女たちもダーウを可愛がりたいと思っていたのだが、ルリアにべったりなので遠慮していた。
 だから、ダーウがルリアから離れた今は、ダーウを撫でまくる絶好の機会だったのだ。
「ダーウ、お肉をあげよう。昨日の夕食のあまりで少し古いが……犬だから大丈夫だろう」
「がふがふがふがふ」
 侍女だけでなく屋敷の料理人もやってきてダーウに肉をあげたのだった。

 行儀作法の授業が終わったルリアがやってきたころには、ダーウはお腹いっぱいになっていた。
「ダーウ! 落ち込んでない? 何してた?」
 やってきたルリアが撫でてくれたので、ダーウはまた嬉しくなった。
「ばーうばうばうばう!」
「おおー剣の修行をしてたのか……なら、お腹がすいたな? 食堂いこうな? サラちゃんとスイちゃんも待ってるし」
「がう!」
 ルリアと一緒に食堂に向かうダーウはお腹がいっぱいなことを完全に忘れていた。
 忘れていたとしてもお腹いっぱいなので当然ご飯は食べられない。
「ど、どうした? ダーウ。しょくよくがないのか?」
「風邪かな?」「叱られたショックかもしれないのである」
「ばう~」
 ここぞとばかりにダーウは哀れっぽい声を出して、ルリアたちに撫でられようとするが、
『ダーウ、いい加減にするのだ! 修行なんて最初だけでダーウはおやつを食べまくっていたのだ!』
 全部見ていたクロがチクった。
「え? お腹いっぱいなの?」
「がう? が~う?」
 とぼけるダーウの表情をみて、ルリアは全てを悟った。ダーウはサボっていたのだ。
「ふむ。ダーウ。午後は……ルリアと剣のしゅぎょうだな?」
 ルリアは罰のつもりでいったのだが、
「わふ? わ~ふわふ」
 ダーウはルリアと遊べると思って尻尾を勢いよく振った。
 おやつをもらったり侍女に撫でられることよりも、ダーウはルリアと一緒にいることが大好きだったのだ。

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