書き下ろしSS

生したら最強種たちが住まう島でした。この島でスローライフを楽しみます 10(完)

レイナの収納魔法にはなにがある? おしまい

※『転生したら最強種たちが住まう島でした。この島でスローライフを楽しみます』第10巻の後にお読み頂けたら嬉しいです!



 レイナの収納魔法に入っていたピアノ。
 ヴィーさんが演奏して以来、子どもたちの間で起きたピアノブームは鎮火することなく、更に勢いを増していった。
 というのも、これまでは子どもたちだけの遊びだったそれが、気付けば大人たちも交ざるようになったのだ。
 きっかけは、俺たちの結婚式でヴィーさんが弾いた演奏。
 元々この島には、俺がイメージするような人工的なものは少ない。もちろん生活に関する物、たとえば衣服や建物などはあったが、カメラや時計などの娯楽品はほぼないと言ってもいいだろう。
 だからこそ、俺の世界で流行った玩具なんかを作ると、みんな楽しく遊んでくれた。
 ピアノが流行ったのも、それらが理由だろう。
 特にヴィーさんが奏でた音楽は、この島の過去と現在を繋いでいるような、自然の歴史の流れを感じさせるものだった。それがこの島のみんなを魅了したのかもしれない。
「とはいえ、さすがに並びすぎだよなぁ……」
「ぱぱぁ……またならんでるぅ」
「むぅ……最近我らが使える時間が少ないのだ」
 天気が良い日は、ストリートピアノみたいに外に置くことにしていた。
 誰でも自由に使って良いよ、という意味なんだけど……人数が少ない日で数人。多い日だと行列ができてしまう状況になった。
 ただでさえ、子どもたちで取り合っていたくらいだ。使用できる時間が減れば、彼女たちの不満が増えるのも当然だった。
 もちろんみんな大人なので、ちゃんと子どもを優先してくれるんだけど……。
「今日はルナたち、無理っぽいなぁ……」
 ゲームは一日一時間、ってわけじゃないけど、優先するにも限度もある。子どもたちもみんなで楽しむべき、と譲り合いができるため我が儘を言わないから、余計に使える時間が減っていた。
「ねぇレイナ。ピアノつくれない?」
「さすがにそれは無理よ……」
「だよね」
「でもどうにかしたいわね。せっかく興味もってくれているんだもの」
 つくれないなら、持ってくるしかない。いっそ島の外に出るという手段も考えた。
 外と中で時間の流れが違うとはいえ、今までの傾向的に遅いのは島の方だ。
「俺が外に出ていって、ピアノを買ってくるとか……」
「止めとけ馬鹿」
「ヴィーさん。どうしてですか?」
 起きたばかりなのだろう。エディンバラさんの家から出てきた彼女は、眠そうに欠伸をしながら近づいて来た。
「一つ増やせば、もう一つ。同じものを持ってくれば、より良い物を。人の欲には際限がないものだ。そしてそれが満たされないときにこそ、思考を巡らせ工夫を凝らし、新しい物が生み出される。それこそが自然の摂理だ」
 見ろ、とヴィーさん笑いながら指さした先には、子どもたちがいた。
 ルナとカティマが丸太を集めて、ティルテュがその丸太を爪で綺麗に整えていた。
 それをスノウが凍らせると、拾ってきた木の枝で叩き始め……。
「ドラム?」
「太鼓だろ」
 多分、太鼓が正しいんだと思う。そもそもこの世界にドラムは多分ないし。
 スノウが木の棒で叩くと、凍っているからか甲高いが響く。しかも叩き方によっていろんな音が奏でられていた。
 わー! と子どもたちが喜んでいる姿を見ると、なるほどと思う。
「あれが工夫を凝らすということだ。まったく、あそこでピアノに並んでいる大人は、もっと子どもの思考の柔らかさを見習うべきだな」
 そう言って、ヴィーさんが笑う。
 何百年、何千年と変わらず停滞していたこの島の成長を見ることができて、嬉しいのかもしれない。
「たしかにこの島のやつらは、大陸の人間からしたら化物以上の存在ばかりだろう。だがそれでも、私たちは人間と変わらず……」
 そこで言葉を切ったヴィーさんは、「余計なことを話しすぎた」と背を向けて再びエディンバラさんの家に戻って行った。
「ヴィーさん、最後になんて言おうとしたのかしら?」
「多分……」
 ――私たちは人間と変わらず、決して特別な存在ではない。
「そうね……最初はいろいろ驚いたけど、今ならそう思えるわ」
「うん」
 最強種とか人間とか、そんなものは関係なく……たとえ種族が違っていても、家族や友人として一緒に笑い合える。
 目の前にある光景がそれを証明していた。
「この島の人たちは、決して特別じゃない」
 カメラを構えて、特別でもなんでもない、ごく当たり前の日常を見る。
 レンズの先には、俺が心の底から求めていたスローライフな一日が広がっていた。

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