タカヒロ×村田真哉×山口ミコトという当代きっての人気マンガ原作者が集結して、大人気作品を生み出す創作の秘密をぶっちゃけトーク!!
先生方のファンやマンガ原作者志望者はもちろん、マンガ好きなら楽しめるディープな座談会です。
タカヒロ×村田真哉×山口ミコトという当代きっての人気マンガ原作者が集結して、大人気作品を生み出す創作の秘密をぶっちゃけトーク!!
先生方のファンやマンガ原作者志望者はもちろん、マンガ好きなら楽しめるディープな座談会です。
PCゲームクリエイターであり、マンガ原作やTVアニメの企画原案も多数手掛ける。
代表作:「アカメが斬る!」「ヒノワが征く!」
「真剣で私に恋しなさい!」「結城友奈は勇者である」
「虫」「動物」などの題材を生かした個性的なマンガ原作で知られるマンガ原作者。
代表作:「アラクニド」「ブラトデア」「蝶撫の忍」「キリングバイツ」
意表を突く展開の続くデスゲーム作品を多く手掛けるマンガ原作者。
代表作:「死神様に最期のお願いをRE」「最底辺の男」「トモダチゲーム」「DEAD Tube」
「アカメが斬る!」連載時から毎年スクエニさんの謝恩会で村田先生、山口先生と原作者同士で時々お話をするととても楽しかったので、一度しっかりお話してみたいなと思ってたんですがコロナになっちゃってなかなか機会に恵まれなかったんですけど、今回こうやってお話できるので楽しみです。
ありがたいです。
久々に人と喋れてありがたいです。
コロナ禍になってからはずっとこもりきりの作業されてます?
そうですね。担当さんとの打ち合わせがめっきり減りましたね。
僕自体は打ち合わせでリズムを作ってたというか、そもそも打ち合わせでしか外出てなかったな。直接打ち合わせが消滅して、自分の打ち合わせが雑談が9割だから、そのままネームを描くことが増えましたね。
自分も家の中で仕事をするのが普通になりました。
お二人とも打ち合わせでマンガを作るタイプではないということなんですか、そもそも?
私はそんなに打ち合わせをすることはなくて、まとまってプロットを出す時にするくらいです。
打ち合わせで喋りながら作っていくタイプと、大体出来ててそれを披露する、方針だけ披露して持ち帰って詰めるタイプと分かれますね。タカヒロさんは絶対に打ち合わせが必要なタイプの作家ではないという感じですかね?
そうですね、私は各巻ごとにまとめたプロットで打ち合わせをする感じです。
打ち合わせがないと不安で仕方がないですね。大丈夫ですか、打ち合わせがなくて?
逆に言うと僕は打ち合わせで詰められないですね。絶対その通りに書かないから(笑)
なるほど(笑)
あんなに話し合ったのに忘れたのかというくらい守らないんで。さっきおっしゃってた1巻分のプロットみたいなのも絶対プロット通りにならないですね。だから非常に作画の方に迷惑をかけると思います。事前に詳細なイメージを求める作画の方がいた場合。
推理物をやってると「犯人誰ですか」って聞きたいじゃないですか。「わかんないです」って答える。こいつか、こいつか、こいつだと思いますって(笑)
そうなんですね。
それは流れとか連載期間によって変わる、厳密にいうとルートがいっぱいあるってことですね。
ああ、わかります。
流れを見て分岐ができるように一応漠然と作っているっていう感じです。
「死神様に最後のお願いをRE」を観てると一つの話がきっちり流れていると思いましたけど、その中で分岐を設けているんですね。
完全に仕組まれていると思ってました。
ライブ感で作っている感じというか。
「ブラトデア」は話の大筋は最後まで決められて描かれているんですか?
いや僕も完全にライブ感覚です。
プロットって書かれます?
ある程度は。
1話ずつ書いてます。出だしを書いてしっくりくるかどうか、そこだけですね。
後はネームにしながら揉んでいく感じですか?
そういうことですね。あんまり僕は先々のことは考えられないんで。
「ブラトデア」は蜘蛛より強い虫を見つけてから連載が決まったんですか? 連載が決まってから見つけたんですか?
見つけてから描き始めました。見つけたってほどではないんですけど、「これだ」という虫がいたので。
題材が分かりやすくて、それをキャラに落とし込むのが村田先生はどのマンガもうまいので、知識を付けつつ楽しく読ませていただいてます。
村田さんスタイルの作品が増えている気がします。戦って、蘊蓄入って能力を説明する構成の作品が。
増えましたよね。
ストーリーでなくいきなりトーナメントみたいな作品、増えましたよね。
「アラクニド」以外でもいろんなジャンルで成功しているから、あのスタイルが強いんですよね。
ナレーションで蘊蓄が入るタイプのマンガが元々好きで、それをやろうと思っていました。
虫は元々好きだったんですか?
好きでした。
お二人は原作はネームまで描いているんですよね?
そうですね。
文章での原作もオファーされたことはあったけど難しそうですね。
自分は完全に文章ですね。元からPCゲームやっててそこからオファーしていただいたんで、いずれネームで描いて渡したいなと思ってて、さりげなく勉強はしてます。まだまだですが。
タカヒロさんは一番マンガ的なプロットというかシナリオを書かれている方だなと思います。マンガ原作に参入されている他業種の方は多い中で。
マンガが好きで読みまくっているせいですね。
マンガが好きでマンガ的な構成で作っている方なんだなと。ページ単位でシナリオ打っているのかなと思ってました。
「アカメが斬る!」とか文章でどうなっているのか想像がつかないですけどね。
例えば駆け引きが無い時の戦闘シーンなんかは「野盗三人、アカメに切りかかる。アカメそれを傷一つなく刀で斬る」くらいしか書いてないです。感情とダメージくらいは指定して。そうするとカッコよく仕上げてくれるので。
「アカメ」も「アラクニド」もグロ表現多いですよね。「アラクニド」はちょっとおさえめかな?
「アラクニド」はぬるいと思いますよ、お二方に比べると。僕はお二人のを読んでいると、「なんでこんな残酷なことをするんだろ」って。
(笑)
「死神様」も開始いきなり、ここまでやるかっていう。
あと我々で共通しているのは女性を弱く描かない。これは「ガンガンJOKER」作家共通かもしれない。みんなだいたい女性が最強なんです。
女性が強いのは揺るがないですね。
いまは女性が主人公でも認められるというか、世の中的にも違和感がないし。
「ブラトデア」でサソリが生きてて良かったと思いました。「芋蟲」も来て天国やって(笑) お姉さん天国やって思いました(笑)
さすがタカヒロさん。
お姉さん好きですよね。
好きですね。自信を持って言える。そのリビドーで書いているといっても過言ではないです(笑)
登場人物を殺す作家でもあるわけじゃないですか。
そうですね。「魔都精兵のスレイブ」(「ジャンプ+」連載中)を書いていても誰か死ぬんじゃないかと思われてます。
みなさんがマンガ原作者になったきっかけはなんですか?自分はPCゲーム作っていたらスカウトのメールが来て、「アカメ」を始めました。
「アカメ」が最初のマンガ原作ですか?
そうです。「ガンガンJOKERさんか、たくさん人が死んでいる、オレもそういう系統のやろう」って(笑) そういうのも描きたかったので。
村田先生はデビューは「アラクニド」じゃない?
僕は「アラクニド」の前に「ヤングガンガン」で「ジャッカル」をやってて、それが原作のデビューです。
そのまえに自分でも絵をかいてたんですけど人気が出なくて、編集に勧められて原作者になった。
じゃあ漫画家をやってて原作者にというパターンですよね。オレもいっしょです。
山口先生はマンガ描いてましたよね?
描いてたんですけど、元々は原作者志望だったんです。でも昔は原作者募集は無かったので一生懸命マンガ描いて出版社に行って、実は原作者になりたいんですと言ったら鼻で笑われて「絵、がんばろうよ」と言われて。色々な先生の元でアシスタントをして、スクエニだと大久保篤先生のアシスタントですね。うやむやのうちにデビュー(笑) その後「ガンガンJOKER」で「最底辺の男」を連載中に他社さんからけっこう声をかけてもらえて
インパクトありましたからね。
WEBマンガも出て来た頃で、ホラー需要が出て来たというのもありましたね。「振り切ったの描こうよ」という方針で描いて、結果的には描いてよかった。今の作風のカルマを(笑)背負うことになりましたけど、原作者の道をひらいた作品になりましたね。それが原作者になったきっかけです。こういうふうにいろいろあって原作者になった人が多いですよね。
原作者は漫画家さんと違って持ち込んでどうこうというのが難しいですからね。
いまは原作者募集の賞も増えましたけど。
みなさんのご活躍のおかげで原作者志望者が増えましたよ。
原作者志望の人に何をアドバイスしたらいいかって難しいですよね。仮にマンガ専門学校の先生になったとき、何を教えられるか。「俺はこうしているけどね」くらいかな。作品を描けば描くほどそうなっている。
作品を描く中で積み上げられた勘で描かれているからですよね。
マンガ賞の審査員をやったことはありますか?
はい、1回。
やったことないです、怖くて。マンガだったら絵のうまさという指針も出しやすいですが、どこをみて審査しました? 気に入った部分とか刺さった部分とか。
やっぱ出だしですね。出だしが面白くないとだいたい面白くないなと。
まったく同感です。ゲームのシナリオも同じです。始めのツカミが面白くないとたいてい面白くないなと。
ツカミが作れるということはサービス精神があるということですもんね。読ませる意識があるというか。それはアドバイスしていいかもしれないですね。
出だしが退屈するかしないかでだいたい分かってしまいますからね。面白いとそのまま最後まですらっと読んでしまう。
ネームも出だしにいちばん気を使いますね。
作業するとき音楽とか聞いてます?
自分は「ヒノワ」を書く時は「信長の野望」とか和風の音楽を聴くことが多いです。人によっては焚火の音とか、絵を描く人はYouTubeを流しながらの人も多いですが、物書きはどうでしょう?
音楽聴きながら文章書けますか?
できます。
すげー。
ラジオとか声が入ってくると無理ですね。
自分は無音で、ネームの絵を描く時はディスコードで喋りながら描いてます。
YouTube見ながらネームを描いてます。
最初にセリフをネームに入れるので それが終わって絵を入れる時に流してます。セリフを入れている時は漠然とニュースなどを流しているか、無音ですね。
インプットしながらアウトプットしていますね。
作業は家でやられてます?
自分は家ですね。
私は会社です。会社の席にいて執筆に集中したいときは席に小さい旗を立てるんです。他の人が声を掛けられないように。
みなさん、スイッチの切り替えはどうしてます? 自分は寝るか散歩か飯かというところなんですが。
何かしてるかな? 切り替えみたいな?
シームレスに別の作品の作業に移るのが自分は無理なんです。
自分の中にキャラのイメージソングがあってそれを聞くと切り替わりますね。
ああ、それがスイッチ入るルーティンですね。
昔はありました。グロい作品を描く時は嫌な気分になる記事を見るとか嫌な気分の映画を見るとか。時間が無くなったのでやらなくなりましたけど。
デスゲームみたいの一杯描いてますもんね。よく思いつくなって。
その一言に尽きますね。
デスゲーム、滅茶苦茶語弊があるけど、もしかしたら一番簡単なジャンルかもしれないです。
ありえない(笑)
ゲームを考えるのが大変そうというイメージがあるんですかね?
更にキャラが乗っかってくるし。
それは分からなくはないんですけど、特に若い人にとって人の死はエロと同じくらい興奮する、読めちゃう刺激物で、デスゲームはその死を16Pとかで演出できるんで読者の興味を引きやすいというのはあります。「クラスに謎の男が現れた。クラスメートが殺された」みたいなのを16Pで。よくないことかもしれないけど。
よくないからこそ魅力的かもしれないですね。
だからこそ気になる。だから作りやすいですね。アプリでそういう作品も増えましたしね。
自分の作品がWEBの広告に出るとそこを取り上げるの? というのなかったですか。
僕はそんなのばっかです(笑)
「そこ? いいけどそこで大丈夫かな」みたいな(笑)
自分もあるな。
今はWEB広告に出ることを意識して構成してくださいという編集さんも増えていますね。クリックさせたら勝ちだから。
そういう点ではデスゲームは書けさえすれば固いということですかね。
ツカミとして選ばれやすいですね。売れるは分からないですけど。
そんなさっと描けるものじゃないですし。
ゲームのルールと人間関係を描かなければいけないですし。
自分では自己評価しにくいですね。
才能です。タカヒロさんも能力バトルをよく思いつけるなと思います。
結構アイデアには詰まります。元から好きだから何とかなっていますね。
よくネタが尽きないなと。ちょっと信じられなくて、どうやっていますか。
その時その時インプットしたものの影響で何とかなっていますね。「アカメ」は少年時代に好きだったもの、時代劇とか含めてそれで何とかなってましたけど。それ以外の作品は普段見ているものからインプットしてストックしていたものを使うという感じですね。
吸収して出していくという感じなんですね。それで行けるのか…他のと似ちゃいそうになるけど。斬新ですよね、「アカメ」の帝具とか。
他の作品から吸収して自分のフィルターを通して、さらに作画の人のフィルターを通すと違うものになるんだろうと思います。ダークヒーローの作品は増えてきましたけど、世界観とかは作画の先生にもよるので事前に意識していたほど他の作品とも自分の別作品とも被らないですね。原作者はある種恵まれていますね。
山口さんはダークヒーローな主人公好きですよね。
好きというか、そっちの方が今は響くんですよね。綺麗なことを言うとウソっぽい。
僕は命とかお金が作品のテーマになりがちで、それに対して「世の中で大事なのはお金じゃない」という主人公は誰がついてくるんだと。「お金が大事だ」と高校生に言わせた方が説得力があって響くんだと思います。もちろん自分の中にそういう部分があっての話ですけど。
分かります。主人公の葛藤も大事ですけど、テーマと違うことに悩んでいるとそれが正論であっても読者はイライラしてしまうと思います。
無茶苦茶空気を読む作業ですね。読者がこの主人公に対してどう思うかなと。
最近はクレバーな男の子のキャラが頭脳で何とかしてく作品が多くて。「死神様」が最初からそれだったから時代を作ったなというか、山口先生が前からやっていることに時代が追いついたと思います。「ゲーム オブ ファミリアー家族戦記-」(「月刊ドラゴンエイジ」連載中)はさらに異世界が舞台だから今の流れと山口流ががっちり合っている。
某大ヒット作品のような優しい主人公が最新トレンドだとすると、ちょっと違ってきているかもしれないですけども。
あの作品のいいところのひとつは鬼をきっぱり殺すところで、それが受け入れられていると思います。 優しいんですけど鬼は殺して、最後に情けをかける。僕は鬼を殺したくないとは一言も言わないし仲間割れもしないのでストレスがない。
「魔都精兵のスレイブ」の主人公もすごい目に遭いますね。強制的にご褒美を与えられるとか。
欲望だけです、本当に。自分の中の「子供」が面白いと思わないと怖いというか自信がなくなっちゃうので少なくとも己の欲は満たしたものを出そうと思っています。
そういう点でひとつ思うのは自分は実家にマンガを送れないですね。甥っ子がまだ小さいですし(笑) 送るのが恥ずかしいものを描いているのはいいものを描いている、尖ったものを描いているんだというラインにしています。振り切った作品だということで。
甥っ子に見せられるマンガを描いているうちはダメだと(笑)
キャラクターからマンガって作ります? 何からマンガ作ってます?
なんだろう?
よくキャラからマンガを作ろうというじゃないですか。僕、キャラからマンガを作ったことはないんで。
自分もないです。ジャンルというかコンセプトからですね。
ネタとか大きいところからということですよね。
キャラから作っているわけではないんですか?
僕はないです。キャラは空白だらけです。
僕は虫からです。
村田先生の作品は世界観とキャラがイコールだというところがありますもんね。作りの違いかも。虫を元にしたキャラを作る際に、喋り方とか性格などのキャラクター性も詰めます?
詰めるというか虫の設定が決まってるんで、虫の習性で決めます。それを人間に落とし込んだ性格にしますね。甲虫だからビールが好きとかそんな感じの。僕の場合は作品を量産していると見せかけて虫を調べているだけだから元ネタが無尽蔵ですね。そんなに苦労はないです。
マンガを作る=キャラを作るで広げられるってことか。
みんなそうしているのかと思ったら違った。
「アカメ」とか「ヒノワ」は、主人公と主人公周りは先に性格も外見的特徴も決めて、後は明確になっているデカい敵くらいを最初に決めて、後は章が進めばそれに従って作っていく感じですね。巻ごとのプロットを出す時に新キャラリストも出していくことが多いです。
キャラが多いですもんね。「アカメが斬る!」でイェーガーズが出たときにしびれました。
ありがとうございます。そこは気合を入れました。
そういう構図になると事前にキャラを詰めないと書けないですもんね。
イエーガーズに味方キャラを殺したやつを一人入れようとか、アカメの妹を入れて因縁を深めようとか考えて持っていきましたね。
あれを真似したくて「蝶撫の忍」(「ガンガンJOKER」掲載)でキャラを一気に出したんです。
それは嬉しいですね。ありがとうございます。
でも出来ないですね。難しさに気が付きました。ウェイブがいいんですよね。途中から出せるのすごいな、神業だよな、どうやったんですか?
アカメにはクロメがいるみたいにタツミにもライバルが要るなと。それでリュウに対するケンみたいな、あっち側のタツミという感じで作りました。
瞬時にウェイブのキャラが立ったのがどうやったのか分からない。
変態だらけのイェーガーズの中でまともな人間なのが彼だけだったのでツッコミとして成り立ちましたね。
団体でキャラを立てる意識ですね。ゲームのやり方なんですかね。昔からのマンガの手法でもありますけども。
山口さんはキャラありきではないんですね。
僕は犯人すら決めずに作るから。設定を詰めると設定に振り回されるのでできるだけ詰めたくないんです。どこまで先を想定するかというと、理想は1ページ先・2ページ先が面白くなるようにしたい。その先の巻を面白くするよりも。だからキャラも詰められない。お前ってどういうやつなのって思いながら書いている。失敗するとシナリオの都合に合わせたキャラになっちゃいますけど。僕はそっちのやり方があっている。
すごいな逆に。
二度の打ち切りを経験したから。新人で「20巻目に大逆転があるんです」という人がいるけどやめておいた方がいい(笑) 2P先がいつも面白ければそのマンガは面白いはずです。
言われてみると山口さんの作品のキャラは「お前そんな奴だったの?」ということが多いですね。
話がぶっ壊れるぎりぎりのところを綱渡りしてます。
読んでてぶっ壊れているとは全然思わない。むしろ計算して作っていると思ってます。
技になっていると思います。すげーよなあ。
いろんなやり方があっていいと思います。荒いと思う人もいるでしょうけど、読んで面白いと思ってくれればそれでいいので。作画の人は大変かと思いますが。
予想がつかないですよね。そういう作風だと思っていても。
元々はガチガチに最初から決めて書く派だったんですけど、それだとおどろくほど固いシナリオになったんです。だから先のことを考えるのやめようと思って。僕が予想つかなければ読者も分からないはずと。それでデビューできたのでこれが僕に合ったやり方なんだろうなと。
真似できないですね。
このクオリティでいっぱい書ける人いないですよ。ゲームのルールもいっぱい作っているし。
でも僕の奴は単純です。マジで「賭ケグルイ」(原作:河本ほむら/作画:尚村透「ガンガンJOKER」連載中)に申し訳ないくらい単純です。僕が整理しきれないんで。ああいうジャンルで一番大事にしているのは「誰が犯人か?」「 裏切者は誰か?」です。2番目に大事にしているのは、「なんでそんなことをしたのか?」。その2つくらい後にゲーム性。推理物でも読者の読み方としてトリックって4番目か5番目くらいの興味なんですよ、一般的な読者は。トリックが好きな人は別にして。「誰が犯人か?」というモチベで読む。僕のマンガはだいたい誰かが裏切っているのでそれが読むモチベになるようにしている。ゲームのルールが難しくてついてこれなくても、裏切り者は誰だろうという興味で読めるように読み筋を用意しています。
勉強になります。
そう聞くと描けそうな気がするけど無理なんだろうな。
いざやると無理なんでしょうね。
「死神様」を連載していた時のストレスはこんなことやってていいのかというストレスですね。先月号のラストからどう話を繋げていいのか分からなくて吐いてました。先月の自分を呪いながら。新人の時からそういうやり方でしたね。30でデビューしましたけどデスゲームという通用するものがあって良かったと思います。往々にして自分の武器は自分でわからないですから。
自分の武器は自分で分かってないということはありますね。
タカヒロさんも「アカメ」までは人が死ぬ作品はなかったですけど、「アカメ」以降からはそういうイメージも出来ましたね。
あれは「ガンガンJOKER」で当時そういう作品が主流だったので合わせたというのが大きいですね。「ああ、オレも殺さなきゃ」って(笑)
「コープスパーティー BloodCovered」(原作・監修:祁答院慎(チームグリグリ)/作画: 篠宮トシミ「ガンガンJOKER」掲載)とかすごかったですもんね。
原作者としてやりがいを感じる時はどんな時ですか? 自分は感想をもらえた時がいちばん大きいですね。編集さんに面白いと言ってもらえた時とか。
マンガ教室で「楽しく描かなきゃ意味がない」という人がいますが全体を通して一個面白ければまあいいやというくらいでしょう、マンガにかかわらず仕事というのは。もちろんその都度楽しみを見つけないと続かない部分はあるけど。だからたいがいの人は面白いという反響で報われると思います。
自分はシナリオなので絵が原作に乗った時はうれしいですね。かなりのやりがいです。
反響や感想は滅茶苦茶嬉しいですよね。
悪い風に取られると嫌なんですけど作画の人に儲かってもらいたい、出版社にも儲かってもらいたいと思っています。僕って良い歯車でしょって言いたい。
仕事人として素晴らしいじゃないですか。
デスゲームやって下さいと言われたら「はい」って言って、書きたくないとか嫌々書いているとかではなくて、自分の描きたいのは人間なのでジャンルにはこだわりはないので。自己完結できない創作者じゃないですか、原作者は。誰かに書いてもらわないと。マンガが売れて、作画の人が仕事を受けて良かったと思って、出版社さんが儲かったってなると歯車になった、役に立ったって思います。だから売れろと思ってる。
作画の人ありきですからね。
協調性が原作者には大事だと思います。こだわりも大事だけど協調性がないと。
だと思います。
僕が苦手な事としてお二人のマンガに共通して言えることですが意外な人が死ぬなって。それを自分の作品でやるのが苦手で。どうやってるんですか?
誰が死ぬかはプロット時点で決めてます。「ヒノワ」でも「アカメ」でも事前に決めてますね。
「ヒノワ」の1話でヒノワ死んでたもんな(笑) びっくりした。でも最初から死ぬと決めていると、死ぬ感じが読者にわかるキャラになっちゃいません?
いちおうそういうふうにならないように書いてますね。
どうやれば?
逆にここで死ぬとそのキャラがもったいないけど、「生き延びてしまうと君の華を奪ってしまうことになるから殺すね」と言い聞かせます。
キャラに言ってるんですね。
延命してしまうと逆に申し訳ないんで。
そっか。
無理やり生かしたところで出番がない。惜しまれるくらいがいい。
大事ですね。
自分でびっくりすることあります。「お前死ぬの?」みたいな。ライブ感で作っているから。
作者がそう思えば読者もそう思いますね。
変な話ですけど自分の作品を見返さないので。プロットも後から見ないので後から読み返すとなんでこんな話にするんだと思います。
滅茶苦茶読者目線でいられてますね。良いですね。
編集さんには読者目線代表を求めていますね。何でもいいから感想をくれと言っています。よく「否定するなら代案をくれ」といいますが、人によるけど僕は感想だけでもいいです。「なんか読みにくかった」「なんか好きになれなかった」とかそういう感想でいい。
意外性でいうと、「アカメ」でタツミとマインがくっつくのはどのへんから決めてました?
一応初めからありました。分岐じゃないけど可能性のひとつとして。アカメかマインか、まあマインだろうなという感じで。
アカメの線もありましたよね。マインが最初からいがみあってるから最初から決めていたのかと思った。
アカメは生粋の暗殺者で、やっぱり恋愛感情はマインになっていきましたね。
「そうなっちゃったんだよね」というふうにいくのが演出としてうまくいっている気がしますね。
キャラも描いていると「お前はそう動くよね」ということもありますから。
「自然とこうなっちゃうよね」というのはキャラが生きてくるとありますね。
「どうやったらマンガ原作者になれますか?」というのも志望者には気になるところだと思いますが?
他人が描けないジャンルを描ける人だと求められるかなと。あとはぶっちゃけ肩書とか仕事歴とか。お医者さんとか。現役の獣医とか。
村田さんジャンル的な。
ものわかりがいいというのもあるかな。
協調性ですね。
タカヒロさんは特殊ですね。ゲーム制作者としての実績があるから。自分も志望者には「実績をつくらないと」と言いますね。競争率が桁がちがうので実績が必要。だから若いんだったらマンガ家を目指すべきだと思います。ちゃんとマンガ一本描くとマンガのことが理解できるので、ある種むしろ近道。
マンガ描けないからネーム原作になるという人が多い。
中学生で絵が描けないからあきらめるのは早すぎると思います。全力で向き合ってみてから他の選択肢と向き合うのがいい。話を考えるのはすべての経験が生きるお得な仕事なので、まずは何かに打ち込んだ方がいいと思います。
原作には画力が必要だと。
絵を見る力が必要だと思うので結局絵を描けた方がいいですね。
ねらってマンガ原作者になるのは難しいですからね。あとは流行っているものを貪欲に分析して取り込んでいくのが重要だと思います。
アドバイスは難しいなぁ。ネームに関して言うと絵をおろそかにしないほうがいいです。マンガは絵なので。お話を伝えるのも絵なので、原作者だからこそ絵をあなどってはいけないと思います。
さまざまなお話ありがとうございました。では最後に告知をお願いします。
「ビッグガンガン」で「アカメが斬る!」の後日談である「ヒノワが征く!」を連載中です。「アカメ」シリーズの続きなので殺伐とした戦国時代の中で生きる少年少女たちの活躍を描いています。5巻まででひとまとまりで、3/25発売の6巻から新章で主人公たちが新たな旅に旅立っているお話なので、ちょうどここからでも読めるお話です。興味を持たれた方はぜひお願いします。「アカメ」好きだった方も読んでみてください。
めっちゃちゃんとしている。台本みたいにちゃんとしている。
さすが社長と思いました(笑)
「ヒノワ」いいっすよね。アカメが強いの知っているからお前らビビんなよって思いながら読んでます。
アカメの活躍シーンはアンケートも良かったようです。
ヒノワも強いので「マジか」ってなりますね。
続いて「ブラトデア」につきまして。
「ブラトデア」は「アラクニド」の続きということなんですよね。「アラクニド」がキャラクターのその後がわからない、もやもやするなどのご意見をいただいて、ちゃんと描かなきゃいけないなというところでやっています。長い目でお付き合いいただけたらと思います。出したい虫がいっぱいいるので読者が支えてくれる限り続けたいです。
「アラクニド」のキャラもいっぱい出てくるし好きだった方は間違いなく楽しめますね。
学習漫画としても楽しめる。
最後に4/22に完結5巻が発売になります「死神様RE」につきまして。
「死神様」のリメイクをずっとやりたくて色んなところで言っていてなんとかなりそうだったけどスクエニさんでやりたくてやれたのは本当にありがたいということがまず一個あって。最後まで書かせていただけて感謝です。作画を受けてくださった古代先生にも感謝でいっぱいです。前の「死神様」の連載の時、最後どうなったかもやもやしていた人は5巻だけ読んでもわかるんでぜひご一読いただければ。10年ぶりに僕も死神様も描いたのでそれも楽しみにしていただければと思います。
次回作もまた「ガンガンJOKER」で書いていただければ。
「帰ってきた最底辺の男」とか(笑)
なかなかリメイクってないので、偉業ですよ。いい雑誌ですよ「ガンガンJOKER」は。すばらしいですね。
まさか最後にこうなるとはと思って。次回作は…次の打ち合わせの時に。なんとなく構想があるので、ぜひ話したい。
これを記事に入れちゃいましょう。
逃げられない感じで(笑)
売れるか売れないかをできるだけ運任せにしたくないので、絶対的にやらなければならないのはアンケをとること、そうでなければWEB媒体にあげたときにビュー数がのびるもの。
マンガ原作者は作者にファンがつかないので売れる売れないは運ゲーだけど、アンケとビュー数は努力で伸びるのでそこは頑張ろうかなと。
どのようなメソッドになるか原作者として楽しみですね。