書き下ろしSS
マイナススキル持ち四人が集まったら、なんかシナジー発揮して最強パーティーができた件 3
アルヴィン×ヒューゴ『約束』
あるときのこと。とある小さな村にて。
「おーい、そうじゃねぇそうじゃねぇ。俺の言ったとおりにしろっつってんだろ」
剣を振る村の子供を見ながら、一人の老人が苦言を垂れていた。
「ほら姿勢が崩れてんぞ。強えのは喧嘩だけか? アルヴィン」
「うっせーよヒューゴのじいさん! なんでこんな意味ないことしなきゃならないんだよ!」
疲労に荒い息を吐きながら、子供が大声で言い返す。
「俺は【剣術】スキルを持ってるんだって! スキルの動きなんてわざわざ覚えなくたっていいんだよ!」
「あーん?」
老人が顔を歪ませて言う。
「冒険者になりたいから剣士のこと教えてくれって、てめぇが言い出したんだろうが。何生意気なこと言ってんだ」
「こんなことじゃなくてもっとほかの、役に立つことを教えてくれよ!」
「役に立つことってなんだよ」
「剣の基本的な扱い方とか、あと算術とか、それからギルドや武器屋での作法とか……」
「かーっ! お前、真面目かよ!?」
「真面目の何が悪いんだよ!」
ムキになって怒鳴り返す子供に、ヒューゴは呆れたように言う。
「あのなぁ。俺のパーティーメンバーは全員高レベルで、
「冒険者に偏見持ちすぎだろ! つーか、じいさんだって十分変だからな! なんだよ所帯も持たずにこんなところで一人で畑耕して。パーティーメンバーが変人ばかりだったのも、どうせ似たもの同士が集まっただけだったんだろ!」
「あーあー言いやがったな。気が変わった。【剣術】スキルの動き、全部覚えるまで他のことは一切教えてやらねぇ」
「くっそー……」
アルヴィンは泣きそうな顔で、古びた剣を構え直す。
「いいよ。その代わり全部覚えたら、俺の知りたいこともちゃんと教えてもらうからな!」
再び剣を振るいだしたアルヴィンを見て、ヒューゴは苦笑する。体格がよく、腕っ節も強く、ともすれば傲慢に育ちそうな子供だったが、どうにも生真面目な気質のようだった。
「まあせいぜい頑張るこった。きっと無駄にはならねぇさ。どっかで役に立つこともあるだろ」
「どっかって、どこだよ」
「知らねぇよ、そんなもん。てめぇで考えろ」
「じいさんはもっと発言に責任持てよぉ!」
アルヴィンはさらに泣きそうな顔になる。それを見て、ヒューゴはふと付け加える。
「ああそうだ。教えるのはいいが、もう一つ条件がある」
「なんだよ、まだあるのかよ」
「大したことじゃねぇ。お前が将来冒険者を引退するときが来たら、俺の教えたことをお前の弟子に伝えろ」
「はああ?」
アルヴィンは呆れたような顔になって言う。
「引退とか弟子とか、どれだけ先の話してんだよ。俺はまだ、冒険者になれるかどうかってところなのに」
「ははっ、それもそうか。お前にとっちゃ、冒険も何も、まだまだ先の話だったな」
それからヒューゴは、まるで昔を懐かしむように、青空を遠く眺めて呟いた。
「だけどな、意外と、あっという間なもんなんだよ」